斎宮さいぐう)” の例文
そこには十台ほどの車があって、外に出したそでの色の好みは田舎いなかびずにきれいであった。斎宮さいぐう下向げこうの日に出る物見車が思われた。
源氏物語:16 関屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それは私が斎宮さいぐうの御裳著もぎの勅使で伊勢へ下った折の事です。伊勢に下っておる間、殆ど毎日、雪に降りこめられておりました。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
沖繩では王家の外戚がいせきの特に有力なものが、伝説として久しくこれを信じていた例もあるが、これも多分は斎宮さいぐうの職分が、王妃の手に移った変遷と関係しているのであろう。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
中にも斎宮さいぐう雅子内親王との贈答が多く、此のおん方とは随分長く契り交していたことが想像されるが、後撰集巻十三恋五の部には、宮が斎宮にならせられて伊勢へお下りになった時の敦忠の歌が
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分は十一、二歳から歴史と文学書とが好きで、家の人に隠して読みふけったが、天照大御神あまてらすおおみかみの如き処女天皇の清らかな気高けだかい御一生がうらやましかった。伊勢いせ斎宮さいぐう加茂かもの斎院の御上おんうえなどもなつかしかった。
私の貞操観 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
斎宮さいぐうの母君の御息所みやすどころが物思いの慰めになろうかと、これは微行で来ていた物見車であった。素知らぬ顔をしていても左大臣家の者は皆それを心では知っていた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
皇后が冊立さくりつされることになっていたが、斎宮さいぐう女御にょごは母君から委託された方であるから、自分としてはぜひこの方を推薦しなければならないという源氏の態度であった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
斎宮さいぐうの伊勢へ下向げこうされる日が近づけば近づくほど御息所みやすどころは心細くなるのであった。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
延喜えんぎの帝が御自身で説明をお添えになった古い巻き物のほかに、御自身の御代みよの宮廷にあったはなやかな儀式などをお描かせになった絵巻には、斎宮さいぐう発足の日の大極殿だいごくでんの別れの御櫛みぐしの式は
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あの六条の御息所みやすどころの生んだ前皇太子の忘れ形見の女王が斎宮さいぐうに選定された。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
斎宮さいぐう女御にょごは予想されたように源氏の後援があるために後宮こうきゅうのすばらしい地位を得ていた。すべての点に源氏の理想にする貴女きじょらしさの備わった人であったから、源氏はたいせつにかしずいていた。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)