放笑ふきだ)” の例文
くるりと向うを向いて怒った風をしたが、肩がぴくりとして、放笑ふきだしてしまった。それで皆も笑い出した。彼もただにやにや笑っていた。
月かげ (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
生徒らは皆一度に放笑ふきだした。ある者はその当て擦りの本体を明らかにしようとして、明らさまなまたひどい註釈をつけ加えた。
すると世界はパリーとともにばかとなる。それからパリーは目をさまし、目をこすりながら言う、「ほんとにおれはばかげてる!」そして人類の面前に向かって放笑ふきだす。
この煙草は臭い臭いって大騒ぎなんでしょう。そして私が放笑ふきだしてしまったものだから、とうとうばれちゃったの。でも平気よ。
変な男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
も一人の方は——十五歳ばかりの娘で、同じく喪服ずくめであったが——放笑ふきだしたくてたまらながってるような子供らしい顔付をしていた。
シュニルディユーは放笑ふきだした。
私が話をして謝ると、皆で放笑ふきだしてしまいました。お隣りの御主人も、やはり変な間違いをなすったことがあるんですって。
白日夢 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
クリストフは老人から歌手だと思われたことを考えて、放笑ふきだした。百姓はそれにつけ込んで、も一本酒を取り寄せた。
澄子は思わず放笑ふきだそうとしたが、喉がぎくりとしてつかえてしまった。それからどうしていいか分らなくなった。
変な男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
彼女はすべての物を嘲笑ちょうしょう的なフランス婦人の眼でながめ、そしてその印象を隠そうとしなかった。流行品店や絵葉書店などの前で、彼女はよく放笑ふきだした。
彼女はどきまぎして、口いっぱいほおばりながら彼をながめた。それから笑い出した。彼も同じく放笑ふきだした。
私は危く放笑ふきだそうとした。それをこらえるために、帽子の縁の下に顔を伏せて唇を噛んだ。後から後からと湧いてくる笑いに、頬の筋肉がぴくぴくと震えるのが、変に擽ったいようで仕方なかった。
未来の天才 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
馬車に運ばれながらがっかりして嘆息していた。家に帰っても寝床の中で、眠りながら嘆息していた……。それから突然、おかしな言葉を思い出して放笑ふきだした。
そのために彼はぷっと放笑ふきだしてしまった。
電車停留場 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
がその夕、彼女はかえって面白がった。彼女は帽子をぬいで生き生きとした顔つきでながめた。クリストフはその音楽と音楽家らとの滑稽こっけいな荘重さに放笑ふきだした。
「では僕が連れて来ましょう。僕の家のすぐ近くのレストーランの女中に、そんなことの好きなのが一人いますから。その代り役者には君がなるんですよ。知った間だと中途で放笑ふきだしたりなんかすると折角の計画が無駄になりますからね。」
微笑 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
その頬の笑靨えくぼは笑っていた。彼女は唇をきっと結んで、放笑ふきだすまいと一生懸命に我慢してるらしかった。
馬の耳って実に不思議な奴だ! 右へも左へも四方へ行き、前方へつっ立ち、横へ倒れ、後ろをふり向き、しかも放笑ふきださずにはおれないほどへんてこなふうでするのであった。
それを聞いて若い令嬢は放笑ふきだした。しかしクリストフは、先刻聴衆が笑ったのを恨んだようには、その笑いを恨まなかった。その笑いは快かったから。それに彼女は彼を抱擁してくれた。
彼女は放笑ふきだして、彼の頬髯ほおひげあごの下でゆわえながら、その反覆句で答えた。
彼はコレットの素振りを考えて放笑ふきだした。そして機嫌きげんよく床についた。
クリストフは放笑ふきだした。ジョルジュも笑った。
そして初めから放笑ふきだした。
そして彼女は放笑ふきだした。