揺振ゆすぶ)” の例文
旧字:搖振
そして、物凄い、慄然ぞっとするような物音を立てて、その鎖を揺振ゆすぶったので、スクルージは気絶してはならないと、しっかりと椅子に獅噛み着いた。
「随分妙な木戸だが、しかし植木屋さんにしちゃア良く出来てる」と手を掛けて揺振ゆすぶってみて
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
橋本と余はこう云う馬車の中で、こう云う路の上に揺振ゆすぶられべく旧市街から出立した。あれがステッセル将軍の家でと云うのを遠くから見ると、なかなか立派にできている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「家のはこの二三日狂っていますのよ。私、腹が立ちましたから、揺振ゆすぶってやりましたわ」
髪の毛 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小声で呼んでみたが返事がないので、もしやともうたまらず、夜具の上から揺振ゆすぶりました。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「森本さん、森本さん」と二三度呼んで見たが、なかなか動きそうにないので、さすがの敬太郎もむっとして、いきなりへや這入はいり込むや否や、森本の首筋をつかんで強く揺振ゆすぶった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宵々よいよいに見る星の光が夜ごとに深くなって来た。梧桐あおぎりの葉の朝夕風に揺ぐのが、肌にこたえるように眼をひやひやと揺振ゆすぶった。自分は秋に入ると生れ変ったように愉快な気分を時々感じ得た。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
宗助は蒲団ふとんへ手を掛けて二三度軽く御米を揺振ゆすぶった。御米の髪が括枕くくりまくらの上で、波を打つように動いたが、御米は依然としてすうすう寝ていた。宗助は御米を置いて、茶の間から台所へ出た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)