指金さしがね)” の例文
これには指金さしがねがありますよ。計画があってのことだ。その指金が何人であるか、それは言うまでもなく、皆さん、お分りのことでさアね。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
『越中! お前の指金さしがねだな!』すると越中めこういいおった。『上様のお命をお助けしたく、お連れ致しましてございます』
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥の酒宴を抜けて、かれがここへ来たのは、いうまでもなく千蛾老人の指金さしがねをうけて、馬春堂の生き胆を料理しに来たものに相違ありません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「親分さん、御苦勞さまで。——私の指金さしがねで、お糸さんに來てもらひましたが、飛んだお叱言を頂戴した相で、まことに相濟みません、へエ——」
「それが赤シャツの指金さしがねだよ。おれと赤シャツとは今までの行懸ゆきがかり上到底とうてい両立しない人間だが、君の方は今の通り置いても害にならないと思ってるんだ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こうしてお銀様を逃がしたのは、てっきりお絹の指金さしがねにちがいないと、いちずに思い込んでしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
妙椿の指金さしがねで里見に縁談を申し込むようになっては愚慢の大将であるが、里見を初め附近の城主を籠罩ろうとうして城主の位置を承認せしめたは尋常草賊の智恵ではない。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
松本さんの指金さしがねか、女中はニヤ/\笑いながら茶粥のお給仕をした。間もなくその松本さんも見えて、僕達はがた/\と汽車に乗り込んだ。それから本線で別れる時
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あの改革案が岩村男の指金さしがねで無かつたら、とつくの往昔むかしに文部省の方でも取りあげてゐたに相違ないといふのは、少しく美術界の消息に通じてゐる者の誰しも首肯する所だ。
それも長くは続きませず、二年あまりにて同じ伊勢殿のお指金さしがねでむざんにも家督を追われ、つむりをまるめられて、人もあろうにあの蔭凉軒おんりょうけん真蘂西堂しんずいせいどうのもとに、お弟子に入られたのでございました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
井の中の薄馬鹿な蛙のような坊主どもの指金さしがねできまる名僧の名に安住する奴も同じようなバカであろう。坊主などはもうゴメンだと思った。
梟雄 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「誰も聴いちゃ居ないか、お駒さん、みんなブチまけて話そう、これは勘定奉行矢部駿河守やべするがのかみ様の指金さしがねだ」
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そういう病気の起こる前に、叔父勘三の指金さしがねで、お菊という女を小間使いに雇った。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それも長くは続きませず、二年あまりにて同じ伊勢殿のお指金さしがねでむざんにも家督を追はれ、つむりをまるめられて、人もあらうにあの蔭凉軒おんりょうけん真蘂西堂しんずいせいどうのもとに、お弟子に入られたのでございました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
ヤス子に食事を与えなかったのも、後手にいましめてチョウチャクしたのも、狐を落すためというお加久の指金さしがねだったという町の噂であった。
山の神殺人 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
城方の勢の一部をして、裏門の方へ廻らせたのも、実は梶子の指金さしがねからであった。
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それも平次の指金さしがねだつたのです。
多数の方々はお嬢さまが卒倒なさッたのをある人の指金さしがねで定められた時刻のようにお考えのようでしたが、この時刻はお嬢さまが勝手に選んだもので偶然にすぎません。
何んとはなしの指金さしがねによりて、そんなことをしたのではあるまいかな
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは一体誰の指金さしがねなんだい
天保の飛行術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
人の指金さしがねであるために、その花園をかねて欲してゐたことも、思ひだせないほどだつた。
(これも勘解由の指金さしがねだな)
猫の蚤とり武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼の指金さしがねであることは云うまでもない。しかし警部は彼の望むほど強硬ではなかった。
犯人 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
これも如水の指金さしがねだ。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)