招牌しょうはい)” の例文
人で埋った華奢きゃしゃな橋の欄干は、ぎっしりと鯉で詰った水面で曲っていた。人の流れは祭りのように駘蕩たいとうとして、金色の招牌しょうはいの下から流れて来た。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
或時は又歩道の丁度真上に、女医生何とかの招牌しょうはいがぶら下っている所も通れば、漆喰の剥げた塀か何かに、南洋煙草たばこの広告びらが貼りつけてある所も通った。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、洋行が初めての赤げっとよろしく感心したり、強烈な色彩の招牌しょうはい(カンバン)や招旗(旗カンバン)が街の両側をびっしり埋めているのに驚いたりしていた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
これをもってはただ平仮名を用うることを主張す。およそ平仮名の通常たる、招牌しょうはい暖簾のれん稟帖ひんちょう稗史はいしたぐい、観てみるべし。すなわち余が舎密の階ものわりのはしごを訳述して同志にはかるゆえんなり。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
人込の中で黄包車ワンポウツに乗ったおんなが、刺繍した小さなくつを青いランプの上に組み合せて揺れて来た。招牌しょうはいのぼりを切り抜けて、彼女の首環の宝石が、どこまでも魚のように光っていった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)