手痍てきず)” の例文
仕方を見せて見物を泣かせる目算つもりのあてはずれ、発奮はずみで活歴を遣って退け、手痍てきず少々負うたれば、破傷風にならぬようにと、太鼓大の膏薬こうやくを飯粒にて糊附はりつけしが、歩行あるくたびに腹筋はらすじよれて、びっこき曳き
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吃驚びっくりして文三がフッとかおを振揚げて見ると、手摺てずれて垢光あかびかりに光ッた洋服、しかも二三カ所手痍てきずを負うた奴を着た壮年の男が、余程酩酊めいていしていると見えて、鼻持のならぬ程の熟柿じゅくし臭いにおいをさせながら
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)