成親なりちか)” の例文
三位中将維盛には、過ぐる鹿ヶ谷事件で憤死した新大納言成親なりちかの娘で、当代一の美女といわれるほどの美しい北の方があった。
俊寛は、いな御身おんみの父の成親なりちか卿こそ、真の発頭人である。清盛が、御身の父を都で失わなかったのは、藤氏とうし一門の考えようを、はばかったからである。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おれがこの島へ流されたのは、治承じしょう元年七月の始じゃ。おれは一度も成親なりちかきょうと、天下なぞを計った覚えはない。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
新大納言成親なりちかとか、平判官康頼へいほうがんやすよりとかいう反動分子を語らって、法皇をようし奉り、幾たびも、この山荘に集まって
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(月雲にかくる)あゝ信頼のぶよりの怨霊よ。成親なりちかの怨霊よ。わしにつけ。わしにつけ。地獄じごくに住む悪鬼あっきよ。陰府よみに住む羅刹らせつよ。湿地しっちに住むありとあらゆる妖魔ようまよ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そこへ権十郎の成親なりちかと猿之助の多田蔵人ただのくろうどが出て来て、だんまり模様になるというような筋で、格別に面白い場面でもなかったが、その序幕が終るまで父は場内へはいって来なかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
成親なりちかの卿の天下同様、平家へいけの天下より悪いかも知れぬ。何故なぜと云えば俊寛は、浄海入道じょうかいにゅうどうより物わかりがい。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
相国の嫡子ちゃくしの小松重盛しげもりが左大将に、次男の宗盛むねもりが右大将に昇官して、徳大寺、花山院の諸卿をも超え、自分の上にも坐ったということが、何としても新大納言成親なりちかには
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)