成瀬なるせ)” の例文
「一と晩のうちに撒き切れなかつたと見えて、撒いた殘りの千兩は、帳面を添へて成瀬なるせ横町の自身番にはふり込んであつたさうだ」
尾張藩主(徳川慶勝よしかつ)の名代みょうだい成瀬なるせ隼人之正はやとのしょう、その家中のおびただしい通行のあとには、かねて待ち受けていた彦根の家中も追い追いやって来る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
諸君、今日は成瀬なるせ仁蔵じんぞう〕君より諸君に向って何か一言述べる様にという事でありました。実は私は教育家でない。
国民教育の複本位 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
この間、笹子会ささこかいの連中が宅へ来て俳句会をやった時分に、成瀬なるせまさとし君が、こんな事をいった。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
一游亭いちいうていと鎌倉より帰る。久米くめ田中たなかすが成瀬なるせ武川むかはなど停車場へ見送りにきたる。一時ごろ新橋しんばし着。直ちに一游亭とタクシイをり、聖路加せいろか病院に入院中の遠藤古原草ゑんどうこげんさうを見舞ふ。
尾州の家老成瀬なるせ氏は犬山に、竹腰たけごし氏は今尾いまおに、石河いしかわ氏は駒塚こまづかに、その他八神やがみ毛利もうり氏、久々里くくり九人衆など、いずれも同じ美濃の国内に居所を置き、食邑しょくゆうをわかち与えられている。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その前には、背の高い松岡まつおかと背の低い菊池きくちとが、たもとを風に翻しながら、並んで立っている。そうして、これも帽子をふっている。時々、久米が、大きな声を出して、「成瀬なるせ」と呼ぶ。
出帆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
家へ帰ったら、留守るすに来た手紙の中に成瀬なるせのがまじっている。紐育ニュウヨオクは暑いから、加奈陀カナダくと書いてある。それを読んでいると久しぶりで成瀬と一しょにあげ足のとりっくらでもしたくなった。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
成瀬なるせ
出帆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)