慈愛いつくしみ)” の例文
子の慈愛いつくしみ、老いたる父の敬ひ、またはペネローペを喜ばしうべかりし夫婦めをとの愛すら 九四—九六
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あかすに打聞息子むすこうでこまねいて默然たりしが漸々やう/\にして首をあげ世に有難き御慈愛いつくしみを傳承りて勸たる和郎が言葉をもちひずして博識はくしきぶりたる我答へ今更いまさら思へば面目めんぼくなし花はともあれ父母のこゝろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ヨハンの母性的な慈愛いつくしみは、ちまたの苦しみと寒さに凍えていたお蝶の心に情けの温みを知らしめたようです。彼女はもうヨハンに甘える気持は出ても、反逆的な心は持てなくなりました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、顏を見ると、光のない鈍い眼、小鼻の廣い平たい鼻、硬さうな黒い皮膚がどうしても愚かものらしく彼れを見させた。他人から慈愛いつくしみを寄せられさうなうるみや光は、身體の何處にも持つてゐない。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)