“愚者（おろかもの）” の例文
彼は私が弾丸（たま）をこめた銃を持ってる事を知っているので、その迷路の中で私をあやめるほど愚者（おろかもの）ではなかったと彼はあっさりと私に話しました。
金の十字架の呪い (新字新仮名) ／ ギルバート・キース・チェスタートン(著)
それ位のことが分らないなんて、僕は何という愚者（おろかもの）だったのでしょう。恋に目がくらんだのです。実際魔がさしたのです
湖畔亭事件 (新字新仮名) ／ 江戸川乱歩(著)
源次郎は屋敷に帰ると直（すぐ）に男部屋へ参ると、相助は少し愚者（おろかもの）で、鼻歌でデロレンなどを唄っている所へ源次郎が来て
怪談牡丹灯籠：04 怪談牡丹灯籠 (新字新仮名) ／ 三遊亭円朝(著)
汝が主謀（しゅぼう）と見ゆる、血気に任せて要（い）らぬ腕立（うでだ）て、心なくもこの島田に殺生（せっしょう）させた、ここに枕を並べた者共もみな一廉（ひとかど）の剣術じゃ、むざむざ犬死（いぬじに）させて何と言訳（いいわけ）が立つ、愚者（おろかもの）め
大菩薩峠：01 甲源一刀流の巻 (新字新仮名) ／ 中里介山(著)
其（その）場で発見する事が出来たことです。——苅田も悪人に似合わぬ愚者（おろかもの）でした。あの足台（クッション）と鍵。執事としての日頃の習慣が、彼を自滅させたのです。それからあの一番列車、——
海浜荘の殺人 (新字新仮名) ／ 山本周五郎(著)
実際紫蘇や、茗荷や、はじかみや、そんなものの折り重つて生え繁つてゐるこの勝手口には、間のぬけた、辛味のきかない、愚者（おろかもの）のぼんつく蓼の一本ぐらゐあつた方がよかつた。
独楽園 (新字旧仮名) ／ 薄田泣菫(著)
この愚老奴を暗愚の将か残忍の人間であるかのように、歯に衣（きぬ）着せぬそのお言葉。さすがは異国の聖僧とかえって尊く思われ申す。いかさま愚老はさようの武器を扱うに堪えぬ愚者（おろかもの）。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) ／ 国枝史郎(著)
源次郎の邸の若党で「鼻歌でデロレンなどを唄っている愚者（おろかもの）」
我が円朝研究：「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について (新字新仮名) ／ 正岡容(著)
「数馬ッ、何故討てぬ。累年の仇敵（かたき）ではないか。愚者（おろかもの）ッ」
鍵屋の辻 (新字新仮名) ／ 直木三十五(著)
王　そちが申す通りなら、わしも法王も愚者（おろかもの）なのじゃ。
胚胎 (新字新仮名) ／ 宮本百合子(著)
さらば何故、愚者（おろかもの）、無用の弓を携ふる？
イーリアス：03 イーリアス (旧字旧仮名) ／ ホーマー(著)
「これっ、鎮まらぬかっ。愚者（おろかもの）めが」
三国志：04 草莽の巻 (新字新仮名) ／ 吉川英治(著)
彼のいう所が本当だとすると、あの曲者追跡の騒ぎも、この愚者（おろかもの）の夢を破らなかったと見えます。
湖畔亭事件 (新字新仮名) ／ 江戸川乱歩(著)
大藏は腹の中（うち）で菊は船上忠助の妹（いもと）だから、此の事を渡邊に内通をされてはならん、船上は古く渡邊に仕えた家来で、彼奴（あいつ）の妹だから、こりゃア油断がならん、なれども林藏は愚者（おろかもの）だから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) ／ 三遊亭円朝(著)
（と竪琴を弾きながら、そろそろと正面の出口に向かう。女子は姿勢を崩さずに、その後に従う。Ｆなる魔法使いは一同を眺め、冷笑的の口調にて）愚者（おろかもの）の騎士、音楽家、領主の君のおひとよし
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) ／ 国枝史郎(著)
「愚者（おろかもの）め」
大菩薩峠：11 駒井能登守の巻 (新字新仮名) ／ 中里介山(著)