悸然ぎょっ)” の例文
狂人きちがいか、乞食か、ただしは山𤢖やまわろ眷族けんぞくか、殆ど正体の判らぬの老女を一目見るや、市郎も流石さすが悸然ぎょっとした。トムがあやしんで吠えるのも無理は無い。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが或事に気付いた私は悸然ぎょっとしました、ほかでもありません。中谷なら髪を長く伸している筈ですのに、いま映った影法師はたしか毬栗頭いがぐりあたまだったではありませんか。
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
扨はいよいよ怪物の所為しわざだと、なおくよく四辺あたりを見ると、其の辺は一面の枯草に埋っていて、三間ばかり先は切ッたての崖になっているので、三人は思わず悸然ぎょっとして
わたくしは悸然ぎょっとして振返りましたが、そこらに見識つたやうな顔は見出みいだされませんでした。なにかの聞き違ひかと思つてゐますと、もう一度おなじやうな声がきこえました。
忠一も一旦は悸然ぎょっとしたが、なおの様子を見届ける為に、倒れたる女を抱えおこして、比較的薄明るい門口かどぐちへ連れ出して見ると、まさしく女には相違ないが、もう息は絶えていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はッと思って目を据えると、驚くべし、小僧の尻の左右に金銀の大きな眼があって、爛々として我を睨むが如くに輝いているから、一時は思わず悸然ぎょっとしたが、流石さすがは平生から武芸自慢の男
河童小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
市郎は悸然ぎょっとしてよくると、これは𤢖では無いらしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)