悪様あしざま)” の例文
旧字:惡樣
その後はうばうで自分のことを悪様あしざまに言ひふらし、果ては太閤殿下にまで讒訴ざんそを試みてゐるといふことを聞いてゐるので、こんな場合の沈黙が
利休と遠州 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
僕は正直に云うけれど、彼女の前で君のことをどんなに悪様あしざまののしったろう。彼奴あいつ白痴ばかで無節操でロマンチックの生地いくじ無しだ! このように僕は云ったものだ。
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
此手紙は最後の手紙なればフリツチイの事を悪様あしざまに記さむは不本意に候へども、此事実は記さざるを得ず候。フリツチイに対して此処にてしかと申残したき事有之候。
人を憎むとか悪様あしざまに思うのは悪いと云っても、今などはどうしてもそうほか思い得ない。
二十三番地 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
もしくは細君を悪様あしざまに書いて、姦通を見せるのが困難ではないが、自分の書かうといふ大学教授夫人は、前に言つたやうに、基督教信者だ、社会事業に従事する欧米の婦人を理想として居る賢夫人だ
未亡人と人道問題 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
しかし日頃のよしみを以て、御辺の首は某がつないで上げたのだと、重ねて申されましたので、兵部殿は顔色を変えられ、何と云われるぞ、不肖ふしょうながら某のことを御前に於いて悪様あしざまに申すような者は
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この私の商売を悪様あしざまに世間に向かって云い触らしおる——女のみさおを売り物にして金ばかりもうけたがる藪原長者は、人間ではない畜生だとか、ああして金は儲けても、やがて悪銭身に着かず
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)