ぞっ)” の例文
ぞっと涼しく成ると、例の頬辺ほっぺたひやりとしました、螢の留った処です。——裏を透して、口のうちへ、真珠でも含んだかと思う、光るように胸へ映りました。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腕車くるまこわれたのも、車夫に間違えられたのも、来ようはずのない、芳原近くへ来る約束になっていたのかも知れないと、くだらないことだが、ぞっとしたんだね。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
使者の職人は、ぞっとするなり、ぐったりと手をきましたとさ。言われる通り、たった今、富さんが、鶏のを入れようとして、入れようとして幾たびか、鉄鎚かなづちを持ったんだそうです。
少年は降りしきる雪の気勢けはいを身に感じて、途中を思い出したかまたぞっとした様子。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それですっぱりと顔をいてよ、そこでまた一安心をさせながら、何と、それから丸々ッちい両肌を脱いだんだ、それだけでもぞっとするのに、考えて見りゃちっと変だけれど、胸の処に剃刀が
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ともしびの暗い、しんとして、片附いた美しい二階の座敷をみまわしたが、そうだ、小包が神月からというのに顛倒てんどうして忘れていた、先刻さっきを思出すと、ぞっとして、ばたりと箱を落して立ち、何をはばかるともなく
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と寂しく笑いつつ、毛肌になってぞっとした。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)