おくれ)” の例文
闇打ちは卑怯ひきょうなことと、お胸の中で、何処かおくれがおありでありましたろうし、それに、日頃信心の、神仏の御加護があったためでもござりましたろう。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
急におくれが出て、出来る事なら、飛んででも逃げたいやうに思ふ。しんが燃えてしまつて、消えさうになつてゐるランプを跡に残して、八はそつと雨戸の間から出た。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
去事いざとなると、何だか氣おくれがする。何處かで、「心細い。」とさゝやくやうなこゑもする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それからは不平の事は日をうて加はつても、準備のはかどつて行くのを顧みて、慰藉ゐしや其中そのうちに求めてゐた。其間に半年立つた。さてけふになつて見れば、心に逡巡しゆんじゆんするおくれもないが、又踊躍ようやくするきほひもない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)