怨言うらみごと)” の例文
怨言うらみごとのありたけを言いつづけたけれど、千代子はとうさんに目っかって叱られたからと、出放題の言訳をして、その後は何と言われても一緒に夜道は歩かなかった。
心づくし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
然しその本人も、この頃では、生活費を送つてやらない爲め、頻りに怨言うらみごとや罵倒の意を反對に送つて來てゐたが、それも來なくなつたほど、現在の樣子は分らない。
泡鳴五部作:03 放浪 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
怨言うらみごとまじりに心配して訊くので、母親も返事を否むわけにも行かず、折々考えるようにしながら
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
震災後の流行はやり言葉で、「この際」ぜいたくをいうなと拒まれたのを根にもって、つんとして見せたが、自分でも子供らしい怨言うらみごとだと気がついて、たちまち口辺に微笑を浮べ
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「お千代様、さぞ泣いたでございましょうねえ。……いずれ、返書かえしで、怨言うらみごとを……」
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは一おうもっともなる怨言うらみごとであれど、神界しんかいには神界しんかいおきてというものがあるのです。
その、すさまじい行燈でさえが、無聊ぶりょうと、冷遇と、閑却と、無視との間に、何か一応の怨言うらみごとをさしはさんでみようとして、それで何を恐れてか、それを言いわずろうているほどに荒涼なこの一室。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)