性懲しょうこり)” の例文
その落した大火鉢というのは、唐銅からかねの恐しく重そうな獅噛み火鉢で、少し濡れた灰を戻して性懲しょうこりもなく、もとの場所に据えてありました。
栄屋の抱えおちゃら(十六)は半玉の時から男狂いのうわさが高かったが、役者は宇佐衛門が贔屓ひいき性懲しょうこりのない人形喰にんぎょうくいである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
起きた後で、あれほど南京虫にされながら、なぜ性懲しょうこりもなくまた布団ふとんを引っ張り出して寝たもんだろうと後悔した。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『あれ程、いつかも申したのに、まだ性懲しょうこりもなく、妹の後を追い廻すか。犬のようなやつだ、武士か、それでも』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ性懲しょうこりもなく悪事をするな……皆さま何ともお恥かしくって申そうようはございませんけれども、此の者はね貴方……ちいさい時分から碌でなしの根性で、放蕩無頼で
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
性懲しょうこりもなく又跡を追おうとしたが、その横町は一度大通りからそれると、まるで迷路のように入組んだ細道になっていて、その上軒燈けんとうもない真暗闇まっくらやみなので、出来るだけ歩き廻って見たけれど
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此処にはいつぞやお夢の頭の上に落された唐銅からかねの大火鉢が性懲しょうこりもなく据えられて、火もなく鉄瓶てつびんもありませんが、冷たい灰が火鉢の半分ほども減らされて居るのでした。
性懲しょうこりもなく、いちどなどは、波止場のマドロスの中から国籍も素姓も分らない弱々しい外国人を拾って来たりした。まだ若い異人なのだが何か病気をもっているらしいのである。