念誦ねんず)” の例文
念誦ねんずへやの飾りつけなどはもとのままであるが、仏像は向かいの山の寺のほうへ近日移されるはずであるということを聞いた薫は
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
このあいだ、一同はけがれみ、口をきよめ、念誦ねんず一心、一歩も忠義堂を出ることはない。そこに寄りつどったきりなのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たとえこうおなりになっても、健康が回復すればそれを幸福にお思いになって、できれば念誦ねんずだけでもよくお唱えしているようになさい」
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そこに念誦ねんずしている右門の姿を、家来達は度々見かけた。右門は、自分のしている事は、兄の罪ほろぼしであり、殺伐な一門の後生ごしょうの為であると信じていた。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おそくのぼるころの月が出て山の姿が静かに現われた深夜に、宮は念誦ねんずをあそばしながら薫へ昔の話をお聞かせになった。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
姑女しゅうとめらしい婦人やら二、三の若党らがすぐ仰天してそこへ駈け集まって来た。——そして元の一ト間のうちへ屏風囲いにして、口々になだめたり念誦ねんずの経をくり返している様子であった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつものように一人で念誦ねんずをするへやのほうへ薫は行っていて、昼ごろに来てみると、命じておいた夫人の宮のお服が縫い上がって几帳きちょうにかけられてあった。
源氏物語:54 蜻蛉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
だが、やがて、童子は、土にまみれたをあわせて何か、念誦ねんずしはじめた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
風情ふぜいではどうしてそれをあなた様にお伝え申し上げてよろしいか方法もつきませんで、仏に念誦ねんずをいたします時にも、そのことを心に持ってしておりましたために
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そしてひそかに彼の冥福を念誦ねんずしていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お居間に隣った念誦ねんずの室のほかに、新しく建築された御堂みどうが西の対の前を少し離れた所にあってそこではまた尼僧らしい厳重な勤めをあそばされた。源氏が伺候した。
源氏物語:10 榊 (新字新仮名) / 紫式部(著)
まだ暗い間に手水ちょうずを済ませて念誦ねんずをしていることが侍臣たちに新鮮な印象を与えた。この源氏から離れて行く気が起こらないで、仮に京の家へ出かけようとする者もない。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
人が不審を起こすであろうことをはばかって、念誦ねんず堂に引きこもって終日源氏は泣いていた。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
自分のくなったあとでこんな家に若い女王たちがなお辛抱しんぼうを続けて住んでいられるであろうかとお思いになり、宮は涙ぐみながら念誦ねんずをあそばされる御容姿にも、清楚せいそな美があった。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
などと人々は終日昔の話をしたり、いっしょに念誦ねんずを行なったりしていた。御堂へ参詣する人々を下に見おろすことのできる僧坊であった。前を流れて行くのが初瀬川である。右近は
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
と歌ったあとでは念誦ねんずをしている源氏の様子は限りもなくえんであった。経を小声で読んで「法界三昧ざんまい普賢大士」と言っている源氏は、仏勤めをしれた僧よりもかえって尊く思われた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
念誦ねんずを哀れなふうにしていて、眠りについたかと思うとまたすぐに目ざめていた。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
日が暮れると御堂に行き、翌日はまた坊に帰って念誦ねんずに時を過ごした。秋風がたにの底から吹き上がって来て肌寒はださむさの覚えられる所であったから、物寂しい人たちの心はまして悲しかった。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お知らせもしたいということを私は長い間仏様の念誦ねんずをいたしますにも混ぜて願っておりましたその効験で、こうしたおりが得られたのでしょうが、お話よりも先に涙におぼれてしまいまして
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
自身の念誦ねんず講堂との間に廊を造らせていた。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)