心急こころせ)” の例文
あとをも見ずしていっさんに走り出ずれば、心急こころせくまま手水口の縁に横たわるむくろのひややかなるあしつまずきて、ずでんどうと庭前にわさきまろちぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「失礼仕りました。まったく、同じ普化僧姿の者を尋ねて参りましたゆえ、夜目でもあり、かたがた心急こころせいた余り人違いの無作法、真ッ平ご免下しおかれましょう」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女房はしきりに心急こころせいて、納戸に並んだ台所口に片膝つきつつ、飯櫃めしびつを引寄せて、及腰およびごし手桶ておけから水を結び、効々かいがいしゅう、嬰児ちのみかいなに抱いたまま、手許もうわの空で覚束おぼつかなく、三ツばかり握飯にぎりめし
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)