心当こころあて)” の例文
旧字:心當
それを聞いた相客は、恵慶の色紙は主人が誰にも見せない大切な秘蔵なのを知つてゐるので、別に心当こころあてにもしなかつた。
こうした妙な心持になって、心当こころあてに我家の方角を見ていると、忽ちはたと物に眼界をとざされた。見ると、汽車は截割たちわったように急な土手下を行くのだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
という委細のはなしを聞いて、何となく気が進んだので、考えて見る段になれば随分頓興とんきょう物好ものずきなことだが、わざわざ教えられたその寺を心当こころあてに山の中へ入り込んだのである。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もとより貧しき身なれども、母の好みにまかせ、朝夕あさゆふの食事をととのへすすむといへ共このたけのこはこまりはてけるが、(中略)蓑笠みのかさひきかづき、二三丁ほどあるところの、藪を心当こころあてゆきける。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)