徹宵てつせう)” の例文
殊に歳暮さいぼの夜景の如き橋上けうじやうを往来する車のは沿岸の燈火とうくわと相乱れて徹宵てつせう水の上にゆらめき動く有様ありさま銀座街頭の燈火とうくわよりはるかに美麗である。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
僕は頭重うして立つあたはず。円月堂、僕の代りに徹宵てつせう警戒の任に当る。脇差わきざしを横たへ、木刀ぼくたうひつさげたる状、彼自身宛然ゑんぜんたる○○○○なり。
前夜は実に徹宵てつせうしてルールを研究した而已ならず、学習院の各運動部選手も亦同院から審判を出したのを名誉とし、一人も洩れなく凡て見物に来た。
徹宵てつせう、ひつきりなしに𢌞つてゐる幾組かの火の番は、私娼達の逃亡をも見𢌞つてゐるのであつた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
夜ごとに近郷近村より集りきたれる若き男女殆ど無數、皆この一塲の廣塲に集りて、徹宵てつせう踊り騷ぐを常となし、夜深やしんに至るに從ひて、その踊の次第に大に、一時二時頃に及べば
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
外へ出ると酒場バア珈琲店キヤツフエ徹宵てつせうして除夜を送る客で満ちて居た。(一月四日)
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
倫敦ロンドンに居る芸術家のある一部が英国の習慣を破り徹宵てつせうして隠し芸を出しながら遊ぶ為に新しく会員組織で設けた巴里パリイ風の酒場キヤバレエである。まだ先週から開いたばかしなので広くは知られて居ない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)