微赤うすあか)” の例文
車のわだちに傷めつけられた路は一条微赤うすあかい線をつけていた。その路は爪さきあがりになっていた。高い林の梢の上にかすかな風の音がしていた。
殺神記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おそくなって船は土手に沿うて進んでいた。宙は倩娘のことが頭に一ぱいになっていて眠られないので、起きて船べりにもたれていた。微赤うすあかい月が川にも土手の草の上にもあった。
倩娘 (新字新仮名) / 陳玄祐(著)
林の外側に並んだ幹には残照ゆうばえが映って、その光が陽炎かげろうのように微赤うすあかくちらちらとしていたが、中はもう霧がかかったように暗みかけていた。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
壑の前方むこうの峰の凹みに陽が落ちかけていた。情熱のなくなったような冷たいその光が微赤うすあか此方こちらの峰の一角を染めて、どこかで老鶯ろうおうの声が聞えていた。
陳宝祠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女が小さなコップに半分ぐらい入れた微赤うすあかい液体を盆に乗せて持って来ていた。女はひざを流して坐っていた。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
微赤うすあかい月の光が浅緑あさみどりをつけたばかりの公孫樹いちょう木立こだちの間かられていた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)