御立おたち)” の例文
仏蘭西フランスの方へ御出掛だそうですね——私は御立おたちの日もよく知りませんでした。今朝新聞を見て急いでやって来ました」
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
清洲御立おたちの後、風説頻りと行われおり候、御帰国の方途ほうとわけて御細心に、路上の変異くれぐれおん備被遊そなえあそばさるべく候
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
珠運様も珠運様、余りにすげなき御言葉、小児こどもとっ小雀こすずめを放してった位に辰を思わるゝか知らねどと泣きしが、貴下あなたはそれより黙言だんまりで亀屋を御立おたちなされしに
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
余の苦痛が咽喉から胃に移る間もなく、東洋城は故郷ふるさとにある母のやまいを見舞うべく、去る人と入れ代ってひとまず東京に帰った。殿下もそれからほどなく御立おたちになった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御介抱もうしたる甲斐かいありて今日の御床上とこあげ芽出度めでたい芽出度めでたけれど又もや此儘このまま御立おたちかと先刻さっきも台所で思い屈して居たるに、吉兵衛様御内儀が、珠運様との縁たくば其人様の髪一筋知れぬようにぬい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)