待機たいき)” の例文
そのために、マルモ隊長は、宇宙艇がいつでもこの火星から離陸し、宇宙へとびだすことができる用意をして、待機たいきしていることを命じた。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
待機たいきして居た八五郎は、いきなり逃げ出さうとする利三郎に組み付いたまゝ、縁側から庭の闇へ轉がり落ちたのです。
待機たいきしていたのも、この月の十八日には、いよいよ伊丹城中の離反組が、内部から火の手をあげて、織田軍を誘い入れることになったという機密を事前に知ったからであった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは五月九日から鮎漁あゆりょうが解禁になったので、遠くからやってきて釣場所の優先権ゆうせんけんを占めようとする人たちが夜中から待機たいきしているのである。狭い堤防は人の影でうずまっていた。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
辞表を書いて懐中かいちゅうに持ちながら諸般の事情によりその提出も出来ず待機たいきしているという不思議な運命うんめいの下にくらすこと一年で、昭和十一年の新春に、やっと辞表を平穏へいおんに出すことが出来た。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
此の部隊にも、先刻佐鎮さちんから、即時待機たいきの命令が出た。今頃は整備兵らが起されて、仕事にかかっているはずである。夜光虫の誤りだと判ったとき、整備兵たちはどんな思いでまた寝にくのであろう。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
予定としては、昨十九日、岐阜城へ向って、一挙に総攻撃を開始するところであったのが、豪雨と呂久川の出水にさまたげられて、きょうも渡河の見込みなく、一両日、待機たいきとなっていた折であった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)