往年おうねん)” の例文
あきらかに、師時親は、往年おうねんの弟子正成が、築城に先だって、これへ見えないことを、不満としている口吻こうふんであった。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奈良は奠都てんと千百年祭で、町は球燈きゅうとう、見せ物、人の顔と声とで一ぱいであった。往年おうねんとまった猿沢池さるさわのいけの三景楼に往ったら、主がかわって、名も新猫館しんねこかんと妙なものにけて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もしまた、彼らが往年おうねんの怨みをすてず、つらくむくいてきたらどうするか。ぜひもない。それまでのことである。
諸国しょこく諸道しょどうからここに雲集うんしゅうした人々は、あすの日を待ちかまえて、空を気にしたり、足ごしらえの用意よういをしたり、またはその日の予想よそう往年おうねんの思い出ばなしなどで、どこの宿屋やどやもすしづめのさわぎ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)