彼様ああ)” の例文
旧字:彼樣
なんにも欲しかないが、先方むこう彼様ああ用心すると、此方こっちでも何かつまんでやり度くなる。お前は豪いよといわれると、何だか豪いような心持になる。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
『ほんとはそれ許りぢやありませんの。若しか先生が、私に彼様ああ言つて置き乍ら、御自分はお遣りにならないのですと、私許り詰りませんもの。』
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
余人にあっては兎も角も、先生にあっては彼様ああでなくては生の結末がつかぬのです。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
御気象ならいづ阿母おつかさんに立ちまさつて、彼様ああして世間よのなかの花とも、教会の光とも敬はれてらつしやるに、阿父おとうさんの御様子ツたら、まア何事で御座います、臨終いまはの奥様に御誓ひなされた神様への節操みさを
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
若しお春さんが彼様ああ言わなかろうものなら、人間は死んでしまわなければならない。太陽よりも小い地球に此んなに大勢生きていられるものか。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此盛岡に来たのは、何日からだか解らぬが、此頃は毎日彼様ああして人の門に立つ。そして、云ふことが何時でも『おだんのまうす、腹が減つて、』だ。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
近所の若い者は東京流の百姓は彼様ああするのかと眼をみはってながめて居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
の馬は何故彼様ああく言う事を聞くのだろう。余程稽古しなくちゃの女のように輪の内を脱けられまい。丁度乃公ぐらいの年恰好の子が親爺の頭の上で鯱鋒しゃちほこ立をしたっけ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其昔、町でも一二の浜野屋の女主人をんなあるじとして、十幾人の下女下男を使つた祖母が、癒る望みもない老の病に、彼様ああして寝てゐる心は怎うであらう! 人間ひとの一生の悲痛いたましさが、時あつて智恵子の心を脅かす。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)