弔辞ちょうじ)” の例文
旧字:弔辭
「堀川さん。弔辞ちょうじを一つ作ってくれませんか? 土曜日に本多少佐の葬式がある、——その時に校長の読まれるのですが、……」
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
知人の婚礼にも葬式にも行かないので、歯の浮くような祝辞や弔辞ちょうじを傾聴する苦痛を知らない。雅叙園がじょえんに行ったこともなければ洋楽入の長唄ながうたを耳にしたこともない。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われわれは彼を船旗に包み、足もとに三十二ポンド弾を置いて、その日の午後に彼をほうむった。わたしが弔辞ちょうじを読んだとき、荒らくれた水夫はみな子供のように泣いた。
「誰でもない、たった今君が弔辞ちょうじを述べてくれた明智小五郎だよ」
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今月ももう七日なぬかとすると、来月号の締切り日は——弔辞ちょうじなどを書いている場合ではない。昼夜兼行に勉強しても、元来仕事に手間てまのかかる彼には出来上るかどうか疑問である。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ところが、式がだんだん進んで、小宮さんが伸六しんろくさんといっしょに、弔辞ちょうじを持って、柩の前へ行くのを見たら、急にまぶたの裏が熱くなってきた。僕の左には、後藤末雄ごとうすえお君が立っている。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのまた棺の前の机には造花のはすの花のほのめいたり、蝋燭ろうそくほのおなびいたりする中に勲章の箱なども飾ってある。校長は棺に一礼したのち、左の手にたずさえていた大奉書おおぼうしょ弔辞ちょうじを繰りひろげた。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)