“幾間(いくま)” の例文
どうかして左手ばかりの練習をしているのを幾間(いくま)か隔てた床(とこ)の中で聞いていると、不思議に前の書中の幻影が頭の中によみがえって来て船戦(ふないくさ)の光景や
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
モンセーニュールは、彼には聖堂中の聖堂であり、その外(そと)の一続きの幾間(いくま)かにいる礼拝者の群(むれ)にとっては最も神聖な処の中でも最も神聖な処である、彼の奥の間(ま)にいた。
表門から雪崩(なだ)れこめば、玄関の間、突き当って書院があり、次に納戸(なんど)、奥に幾間(いくま)かの居間がある。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
案内役は同朋衆、傍(かたわ)らに添ったは水府館、幾間(いくま)か通ると将軍家の寝所、ご親藩衆が居流れている。ピタリと坐った薬草道人、吉宗の脈所を握ったが、「大丈夫でござる、お癒し致す」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あゝ云う大家(たいけ)から嫁が来るってお前はどうも仕合せだ、どうも大きな家(うち)だよ、座敷が幾間(いくま)も/\あって、庭も大変立派だよ、其の代りに掃除が届かないね、松葉が一杯にこぼれて居るよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
家は幾間(いくま)かに作られていて、食い物を売るのが商売であった。
その感情が、ふと、騒々しい物音となっていた時、幾間(いくま)もへだてた家康の耳にまでそれが聞えたのであった。——ばたばたと、廊下を小走りに、ひとりの小姓が来て、家康のことばを伝えた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)