まぼろ)” の例文
または自分の想像した通りまぼろしに似た糸のようなものが、二人にも見えない縁となって、彼らを冥々めいめいのうちにつなぎ合せているものか。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ちらりとお母さんの笑顔がまぼろしに見えたかと思うとぱっとしてその影は何処へか消えてしまいました。
迷い路 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのまぼろしが殊に楽しかったと見えて、話は御伽おとぎの本の絵にも残り、また諸国には鼠の隠れ里の故跡こせきここだと称して、耳を地面につけて聴くと、米うすの音がきこえると謂った
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夢で見たものまぼろしで感動したことが、強く残っていなければ神の像は描かれぬ如く、かつてある日の物の哀れというものが、自然に我手を役してその面影を再現させようとしたのが
まれにはまぼろしに見たと称する者が、だんだんと新たな信仰の形を作って行ったが、普通の場合には毎年の季節風物、その中でもこういう生物の自然の動作によって、端的に神の来格を推測していた。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
数々のまぼろしを積み重ねたのも自然であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)