帳尻ちょうじり)” の例文
政府で歳入の帳尻ちょうじりを合わせるために無茶苦茶にこの材木の使用を宣伝し奨励して棺桶かんおけなどにまでこの良材を使わせたせいだといううわさもある。
災難雑考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
食った奴も、あとでまた、弱ってしまやあ、ほかの奴から食われるんだからな。帳尻ちょうじりは合うんだ、永い目で見りゃ。だから、それでいいんだよ。
胎内 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
……桂さんだって、武市さんだって、書生ッぽ時代には、さんざん、江戸のご厄介やっかいになって、私の家にだって、まだ、借金の帳尻ちょうじりが残っているんですよ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貯金の帳尻ちょうじりのことなんか云やあしないのに、ちょうどそのくらいになるときまって女ができるんだからふしぎよ
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あの時の帳尻ちょうじりを見てもわかるように、七か年を平均して毎年百七十両余が宿方の不足になっていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ややもすれば月末になって勘定が足りなくなる。すると女房が内証で里から金を持って来て帳尻ちょうじりを合わせる。それは夫が借財というものを毛虫のようにきらうからである。
高瀬舟 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(まとまりのある詩すなわち文芸上の哲学は、演繹的えんえきてきには小説となり、帰納的きのうてきには戯曲となる。詩とそれらとの関係は、日々の帳尻ちょうじりと月末もしくは年末決算との関係である。)
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
「今日の帳尻ちょうじりと、荷繰にぐりのことを申上げる心算つもりでございました」
『うむ、だいぶ帳尻ちょうじりがあわなかった。然しな、戦場ですらある例だ。あまりいうな』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七か年を平均した帳尻ちょうじりを見ると、入金二百三十六両三分、銭六貫三百八十一文。支払い金四百十一両三分、銭九貫六百三十三文。この差し引き、金百七十五両銭三貫二百四十二文が不足になっている。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)