市村いちむら)” の例文
ただ市村いちむら座の向側に小さい馬肉の煮込を食わせるところがあり、その煮方には一種のこつがあって余所よそではあじわえない味を出していた。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
最後の見舞に来てくれたのは演芸画報社の市村いちむら君で、その住居は土手どて三番町であるが、火先がほかへそれたので幸いに難をまぬかれた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
▲話は一向いっこうまとまらないが堪忍かんにんして下さい。御承知のとおり、私共は団蔵だんぞうさんをあたまに、高麗蔵こまぞうさんや市村いちむら羽左衛門うざえもん)と東京座で『四谷怪談』をいたします。
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
芝居しばいは、と尋ねると、市村いちむら、中村、森田三座とも狂言名題なだいの看板が出たばかりのころで、茶屋のかざり物、燈籠とうろう提灯ちょうちん、つみ物なぞは、あるいは見られても
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それはそうと、いずれ御結構振舞いが有りましょうネ。新富しんとみかネ、ただしは市村いちむらかネ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もともと市村いちむらへやったのは、浮気をさせておいては、いつまでも止めないから、一度嫁にやってしまおう、そしたら、なんぼなんでも、いくられてるからって、あの貧乏じゃお尻が落附くまい
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)