岩高蘭がんこうらん)” の例文
一方にはまたあの緑の毛氈もうせんを敷いたような岩高蘭がんこうらん苔桃こけももの軟いしとねに、慈母の優しいふところを思わせる親しさがある。
秩父のおもいで (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
岩高蘭がんこうらんや岩梅がその界隈かいわいに多い、踏む足がふっくりと、今の雨でジワジワ柔い草の床に吸い取られる、この辺から眼の前の農鳥山を仰ぐと、残雪が白いたすきをかけて綾を取っている
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
池の囲りには小岩鏡、御前橘、石楠、姫石楠、イワハゼ、珍車、岩高蘭がんこうらん、立山竜胆りんどう蔓苔桃つるこけもも、麒麟草、猩々袴、鷺菅などがあり、殊に毛氈苔と白山小桜が美しい。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
小屋から二十間ばかり北に離れて、綺麗な砂地に岩高蘭がんこうらん苔桃こけももなどの生えている草原がある。
暫く四方の眺望をほしいままにし、そして岩を下りると、しとねのようにやわらかいふっくりした青い岩高蘭がんこうらん苔桃こけももの中に身を埋めて、仰向けに寝ころんだまま、経文を誦する人声が耳に入るまで
金峰山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
附近には岩高蘭がんこうらん苔桃こけもも、蔓苔桃が一面に緑の毛氈——そのすっきりした柔い感じは寧ろ天鵞絨ビロードを想わせる——を敷き詰めて、秋十月頃には紅色紫黒色の小果が玉累々たる有様を呈する。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
高根薔薇たかねばらの艶麗、高根撫子なでしこの可憐、黄花石楠きばなしゃくなげの清楚に加えて、伊吹麝香草いぶきじゃこうそう、車百合、千島桔梗ちしまぎきょうなどが現われ、少し岩の露出した所には、姿のいい真柏や唐松などが生えている。苔桃こけもも岩高蘭がんこうらんも多い。
北岳と朝日岳 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)