山鶯やまうぐいす)” の例文
その日が来たら秀吉に暇をねがって、せめて人命を終る前の一年なりとも、高野にのぼって山鶯やまうぐいすの声でも聞きたいものと念願していたからである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山鶯やまうぐいすだの、閑古鳥かんこどりだのの元気よくさえずることといったら! すこし僕は考えごとがあるんだからだまっていてくれないかなあ、と癇癪かんしゃくを起したくなる位です。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
もとより人里には遠く、街道はずれの事なれば、旅の者の往来ゆききは無し。ただ孵化かえり立のせみが弱々しく鳴くのと、山鶯やまうぐいすしゅんはずれに啼くのとが、れつ続きつ聴えるばかり。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
もはや、温暖あたたかい雨は幾たびとなく木曾の奥地をも通り過ぎて行ったころである。山鶯やまうぐいすもしきりになく。五平が贄川にえがわでの再会を約して別れて行った後、半蔵はひとり歌書などを読みちらした。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)