山顛さんてん)” の例文
頂上を踏んだと思う途端に、彼は意志のつるもぷつんと切れたように倒れてしまったのだ。山顛さんてんの風はたえまもなく彼の背へ小石を浴びせた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白木は、ステッキの先をあげ、はるかの山顛さんてんにどっしりと腰をおちつけているゼルシー城塞じょうさいゆびさした。
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
アラビヤの沙漠をわたる熱風を満面に浴びて遠くシナイの山顛さんてんを眺め、火のような阿弗利加アフリカの、空にはアクラブ Akrab, 10000ft. の英姿を仰いで
足裏を破りすねを傷つけ、危巌きがんを攀じ桟道さんどうを渡って、一月の後に彼はようやく目指す山顛さんてん辿たどりつく。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
富士山顛さんてん自焼。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
愛宕山あたごやま山顛さんてんには、闇がいよいよ濃くなって来た。月のない空には、三つ四つの星が、高い夜の空に、ドンヨリした光輝こうきを放っていた。やや冷え冷えとする、風のない夜だった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)