小細工こざいく)” の例文
はじめから、そのつもりで両方が虎視眈々こしたんたん、何か「きっかけ」を作ろうとしてあがきもがいた揚句あげくの果の、ぎごちないぶざまな小細工こざいくに違いないのだ。
チャンス (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼の英邁えいまい奇行は道具立ての小細工こざいくたるを見て可笑おかしくなった。彼はその知れる限りの最美を尽しておらぬ。むしろ彼の最悪の行儀をなしていたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かりにできたところで、それは小細工こざいくというもんだ。そんな小細工をするよりか、あたえられた立場をそのまますなおに受け取って、それを生かす工夫くふうをしたらどうだ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
こんなやり方では出して貰へないことがよくわかつたゞらうね。私は小細工こざいくは大嫌ひだよ。殊に子供がするなんて。計略は効目きゝめのないことを、私はお前に教へてやらねばならない。
壁を破ったり、根太をはがしたり、小細工こざいくをしないで、何の痕跡も残さず、堂々と出入り出来る箇所があるのです。エドガア・ポオの小説にね、『盗まれた手紙』というのがある。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ず右の女と夫婦ふうふになり小細工こざいくなどしてくらせしに生質せいしつ器用きようにて學問も出來其上醫道いだう心懸こゝろがけも有りしゆゑ森通仙もりつうせんと改名し外科げくわもつぱらとしてかたはら賣藥をひさぎ不自由もなく世を送りし中女子一人をまうけ名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下手な小細工こざいくをしたって仕様が無いと思って、「まっすぐに、ここさ来た」と本当の事を言ったのですが、嫁は別にそれを気にとめる様子も無く、あたらしいまきを二本、炉にくべて
(新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし、それは一種の小細工こざいくだ。そういう小細工はやらないほうがいい。やはり塾生を愛することだよ。塾生の良心をね。その愛さえあれは、塾堂はつぶれても、塾はどこかで生きる。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)