対向さしむかい)” の例文
旧字:對向
まだよくの言えば、おんとお孝と対向さしむかいで、一猪口ひとちょこる処をですだ、敷居の外からでもい、見ていたいものですだ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「は、」と、いらえをし、大人しやかな小間使は、今座に直った勇美子と対向さしむかいに、紅革べにかわ蒲団ふとんを直して
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
医師せんせいは亭主関白といった足取、深更に及んでも、夜中でも、その段は一切頓着とんじゃくなく、どしどしと廊下を踏んで、やがて対向さしむかいになる時、かたわらの玄関の壁越にすさまじいいびきを聞いて
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其奴そいつ間夫まぶだか、田楽だか、頤髯あごひげすさまじい赤ら顔の五十男が、時々長火鉢の前に大胡坐おおあぐらで、右の叔母さんと対向さしむかいになると、茶棚わきの柱の下に、櫛巻の姉さんが、棒縞ぼうじまのおさすり着もの
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡査と対向さしむかいに立ったのなんぞ、誰も立停たちどまって聞くものは無い。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)