家守やもり)” の例文
新しい家には、気味のわるい大蜘蛛も家守やもりもゐなかつた。その代り、近くに水田や竹藪が多いせゐで、じつに蚊が多かつた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「あの人は物の汚點しみ家守やもり見たいな人で、何處に居るかわかりやしません。鐵砲は撃てさうもないが、下手人の姿くらゐは見て居るでせうよ」
あの人雨に濡れるのに、大急ぎで外へ飛び出して、石柱にぴったりと家守やもりのようにくっついて、あの自動車をいつまでも恨めしそうに見送っていたわ。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
人夫たちはベンゲット山腹五千フィートの絶壁をジグザグに登りながら作業しなければならず、スコールが来ると忽ち山崩れや地滑りが起って、谷底の岩の上へ家守やもりのようにたたき潰された。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
とろ/\とねむつてめれば、いぬてぺろ/\とめてる……胴中どうなかへびく、いまあなたらしい家守やもりはなうへたてにのたくる……やがては作者さくしや身躰からだおそふて、をゆすぶる
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
薄ガラスの家守やもりの腹は
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
縁側の左手には、湯殿ゆどのや台所があつて、そこは南方の特産物である巨大な蜘蛛や、おびただしい家守やもりなどの出没する場所——いやむしろ、定住地の観があつた。
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)