実体じつてい)” の例文
旧字:實體
いま一人ひとり此処こゝるさうぢやが、お前様まへさま同国どうこくぢやの、若狭わかさもの塗物ぬりもの旅商人たびあきうど。いやをとこなぞはわかいが感心かんしん実体じつていをとこ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
客は結城朝之助ゆふきとものすけとて、自ら道楽ものとは名のれども実体じつていなる処折々に見えて身は無職業妻子なし、遊ぶに屈強なる年頃なればにやこれを初めに一週には二三度の通ひ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
近所に住む或る大工に片づいて、可愛いゝ二つになる赤坊をもつた一番の姉が作つてよこした毛繻子のたすきをきりつとかけて、兄は実体じつていな小柄な体をまめ/\しく動かして働いた。
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
今まで不見不知みずしらずの、実に何の縁も無いお前さん方が、かうして内に来て、狭山君はああして実体じつていの人だし、お前さんは優く世話をしてくれる、私は決して他人のやうな心持はんね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
実体じつていな気の弱い男で、借金の言訳にさへ始終まごついて居る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)