孔雀石くじゃくいし)” の例文
硫黄いおうを燃せばちょっとのくるっとするようなむらさきいろの焔をあげる。それからどうくときは孔雀石くじゃくいしのような明るい青い火をつくる。
その間も、師の蒲衣子ほいしは一言も口をきかず、鮮緑の孔雀石くじゃくいしを一つてのひらにのせて、深いよろこびをたたえた穏やかな眼差まなざしで、じっとそれを見つめていた。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
吐いてゐたかなしい地面が今は平らな平らな波一つ立たないまっ青な湖水の面に変りその湖水はどこまでつづくのかはては孔雀石くじゃくいしの色に何条もの美しいしまになり
ひかりの素足 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
たちまち、一人の女の眼が、孔雀石くじゃくいしの粉を薄くつけた顔が、ほっそりした身体つきが、彼に馴染なじみのしぐさと共になつかしい体臭たいしゅうまでともなって眼前に現れて来た。ああ懐かしい、と思う。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
むこうの海が孔雀石くじゃくいしいろとくらあいいろとしまになっているそのさかいのあたりでどうもすきとおった風どもが波のために少しゆれながらぐるっとあつまって私からとって行ったきれぎれのことば
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)