子守こも)” の例文
そこにはあのゆるやかな抑揚ある四拍子の「子守こもり歌」の代わりに、機械的に調律された恒同な雑音とうなり音の交響楽が奏せられていた。
糸車 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
言葉のやさしいのと流行唄はやりうたの調子に近いのとで、手ぬぐいに髪を包んでそこいらの橋のたもとに遊んでいるような町の子守こもり娘の口にまで上っていた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こしごろもの觀音くわんおんさまぼとけにておはします御肩おんかたのあたりひざのあたり、はら/\と花散はなちりこぼれてまへそなへししきみえだにつもれるもをかしく、したゆく子守こもりが鉢卷はちまき
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
僕のうちには子守こもりのほかに「てつ」という女中が一人あった。この女中はのちに「げんさん」という大工のお上さんになったために「源てつ」という渾名あだなもらったものである。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
母親とか子守こもりとかといっしょにいた時に、偶然それらの動物を目撃してそれを意識した、その同じ瞬間にその保護者なる母なり子守りなりが、ひどく恐怖の表情を示したとすると
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
父親が子守こもり歌のようなものを歌ったり、口笛を吹いたりしても効能がない。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)