妾達わたしたち)” の例文
「美奈さんなんか、何うお考へになつて。妾達わたしたち女性を追うてゐるあゝ云ふ男性を。あゝ云ふ女性追求者と云つたやうな人達を。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
二人の乙女は驚いたように、しばらく鳰鳥を見詰めていたが、「妾達わたしたちは盗まれたのでございますの」一人の乙女がこう云った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その時母は嫂に向って、「もう好い加減に一郎を起して、いっしょにあっちへ御出おいで。妾達わたしたちむこうへ行って待っているから」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あのアルプスの主婦ママチャンの妹さん……御存じでしょう。会計をやってらっしゃる貴美子さん……いつも妾達わたしたちによくして下さる。ね……あの人に頼まれたもんですからね。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
妾達わたしたちも時々に町へ出るから、お前さんともかねてお馴染だが、妾達は二十年以来このかたこのいわやに棲んで、山𤢖と一所いっしょに暮している。けれども、妾の倅の重太郎は𤢖じゃアない。これでも立派な人間だ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「美奈さんなんか、うお考えになって。妾達わたしたち女性を追うているあゝ云う男性を。あゝ云う女性追求者と云ったような人達を。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「これなら妾達わたしたちの荷物を乗っけてもよさそうだね」と母は停車場の方をかえりみた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「二つの玉がなかろうものなら、妾達わたしたち生きてはいられません」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人非人奴にんぴにんめ! 人非人奴! どれほどまで執念しゅうね妾達わたしたちを、苦しめるのでございましょう。あゝ口惜くやしい! 口惜しい!」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「でも足弱の妾達わたしたちには、上って行くことは出来ません」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いゝえ! ちっとも、心当りのない方ですわ。でも、可笑おかしな人ですわね。妾達わたしたちを、じっと見詰めたりなんかして。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「人非人! 人非人奴! どれほどまで執念しふね妾達わたしたちを、苦しめるのでございませう。あゝ口惜しい! 口惜しい!」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
妾達わたしたちを、追うて来る人でも、身体と心との凡てを投じて、来る人はまだいゝのよ。あの人達なんか遊び半分なのですもの。狼の散歩旁々かた/″\人の後からいて行くやうなものなのよ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)