妹婿いもうとむこ)” の例文
今此文に由つて、蘭軒の養孫棠軒と霞亭の養子悔堂の妹婿いもうとむことの交際が証せられるのである。意篤は己巳六十二歳であつた。以下意篤との往来は省く。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それから混雑の中を押し分け押し分け妹婿いもうとむこや、養子達に一々、この事を報告してまわった。皆、泣いて頭を下げた。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大心院は、信長の妹婿いもうとむこである滝川一益かずますの創建であって、その一益の一族明叔という者が二世に坐っていたのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうもわたしの妹婿いもうとむこのシュリオだって、おまえに仕事を見つけてやることはできないだろうしね。
(先生のペン皿は竹だつた。)これは香以かうい妹婿いもうとむこに当たる細木伊兵衛さいきいへゑのつくつたものである。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
北条遠江守ほうじょうとおとうみのかみむすめで、右大将家の御台所政子みだいどころまさこには妹婿いもうとむこになる稲毛いなげ三郎重成しげなりが、その七月に愛妻を失ったので、悲しみのあまりに髪をって出家して、その月になって亡妻ぼうさい追福ついふくのために
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
妹婿いもうとむこが商法上の失敗から、夫婦して湯村の家へかゝつてから最う三月近くになる。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
おひろは今でも辰之助の妹婿いもうとむこの山根に心が残っていたけれど、お絹に言わせると、金には切れ放れはよかったし、選びもおもしろい山根ではあったけれど、別れぎわが少しいさぎよくない点があったので
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
景尚の父官藏景次は播磨國高砂の城主駿河守景則と孝高の母の姉、明石氏との間に生れた子で、此景次が尾エをのえ氏をめとつて生ませたのが景尚である。尾エ氏は父を安右衞門と云つて、孝高の妹婿いもうとむこである。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)