天子様てんしさま)” の例文
旧字:天子樣
徳川家が将軍にった末で余り勢いは強くなかったけれども、とにかく将軍というものが政権を持っておってその上に天子様てんしさまがおられるという。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「兵隊に出すのが嫌だなンか云うことァ出来ねえだ。何でも大きくなる時節で、天子様てんしさまくにを広くなさるだから」と云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それに俺等わしら献納けんのうした愛国号も百台ほどあるしサ、そこへもってきて、日本の軍人は強いぞ、天子様てんしさまのいらっしゃるこの東京へなんぞ、一歩だって敵の飛行機を近付けるものか。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天子様てんしさまのおそばにつかえて、天文てんもんうらないでは日本にっぽん一の名人めいじんという評判ひょうばんだったのをさいわい、あるとき悪右衛門あくうえもん道満どうまんたのんで、てもらいますと、奥方おくがた病気びょうきはただのくすりではなおらない
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)