大菩薩峠だいぼさつとうげ)” の例文
左に『大菩薩峠だいぼさつとうげ』の幟を飜す活動小屋が立っていて、煌々こうこうと灯をかがやかす両側の商店から、ラヂオと蓄音機の歌が聞える。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
僕はやはり西川といっしょに中里介山氏の「大菩薩峠だいぼさつとうげ」に近い丹波山という寒村に泊まり、一等三十五銭という宿賃を払ったのを覚えている。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こないだ電車の中で新国劇の「大菩薩峠だいぼさつとうげ」上演の広告ビラを見かけた。中里介山なかざとかいざん居士追善興行としてあった。この芝居の上演も久し振りな気がする。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
大菩薩峠だいぼさつとうげは江戸を西にる三十里、甲州裏街道が甲斐国かいのくに東山梨郡萩原はぎわら村に入って、その最も高く最もけわしきところ、上下八里にまたがる難所がそれです。
かの「大菩薩峠だいぼさつとうげ」において怪奇なる役割を演ずる愛嬌者宇治山田の米友よねともの如く、内心鬱勃うつぼつたる憤懣ふんまんを槍に托し、腕力に散ずることの出来ぬ僕は、文書を以てするのである。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
出しものは大菩薩峠だいぼさつとうげに温泉場景などであったが、許嫁いいなずけの難を救うために、試合の相手である音無し流の剣道の達人机龍之助にすがって行くお浜が、龍之助のために貞操を奪われ
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
我養家は大藤村の中萩原なかはぎわらとて、見わたす限りは天目山てんもくざん大菩薩峠だいぼさつとうげの山々峰々垣をつくりて、西南にそびゆる白妙しろたえの富士のはをしみて面かげをしめさねども、冬の雪おろしは遠慮なく身をきる寒さ
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
源氏物語、アラビアン・ナイト、八犬伝、戦争と平和、大菩薩峠だいぼさつとうげ
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
けれども少し話し合って見ると、やっぱり田舎いなかの文学通だけにどこか見当が違っているのね。たとえば「大菩薩峠だいぼさつとうげ」なんぞも一代の傑作だと思っているのよ。
文放古 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大正十何年の五月、甲斐かいの国の塩山えんざんの駅から大菩薩峠だいぼさつとうげに向って馬を進めて行く一人の旅人がありました。
山道 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ちょうど「大菩薩峠だいぼさつとうげ」が連載されていて、私の家でもみんな愛読していた。おそらく新聞の読物としては、これほど作中人物が読者に馴染深く親しまれた小説も少ないのではないだろうか。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)