大胡座おおあぐら)” の例文
その向うには何でも適中あたるという評判の足和尚おしょうさんが、丸々と肥った身体からだに、浴衣がけの大胡座おおあぐら筮竹ぜいちくしゃに構えて、大きな眼玉をいていた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
親父は大胡座おおあぐらを掻いて女のお酌で酒を飲みながら猿面なぞと言って女と二人で声を立てて笑う、それがしゃくに障ったのはむりもないと私にも考えられたが
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
その助五郎が明治湯めいじゆの流し場に大胡座おおあぐらをかいて、二の腕へった自慢の天狗の面を豆絞まめしぼりで擦りながら、さっきから兎のように聞き耳を立てているんだから事は穏かでない。
助五郎余罪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
と治平は真青まっさおになりブル/\慄え出すを見て、ガラリと鞄をほうり出し、どたアりと大胡座おおあぐらをかいて、かくしからハンケーチを取出とりいだし、チンとはなをかんで物をも云わず巻煙草に火を移し
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鉄は土間に大胡座おおあぐらをかいて、精一杯の啖呵を切るのです。
と毛むくじゃらの大胡座おおあぐらを掻く。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見るからに血色のいい禿頭はげあたまの大入道で、澄夫の膳の向うに大胡座おおあぐらをかいた武者振は堂々たるものであったが、袴の腰板を尻の下に敷いているので、花嫁の初枝が気が附くと真赤になって下を向いた。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
主人あるじ大胡座おおあぐらで、落着澄まし
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)