大竹藪おおたけやぶ)” の例文
お銀様は、大竹藪おおたけやぶの中の椿の木の下に、茶室をうつして、それに建増しをしたところに、ひとり住んで、その呪われたる存在をつづけて行きます。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ある。今でもあるだろう。門前から見るとただ大竹藪おおたけやぶばかり見えて、本堂も庫裏くりもないようだ。その御寺で毎朝四時頃になると、誰だかかねたたく」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
谷中やなかの秋の夕暮は淋しく、江戸とは名ばかり、このあたりは大竹藪おおたけやぶ風にざわつき、うぐいすならぬむらすずめ初音町はつねちょうのはずれ、薄暗くじめじめした露路を通り抜けて、額におしめのしずくを受け
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私はその頃蓬莱町ほうらいちょうに住んでいたのですが、借家でも庭は広くて正面に赤松の林があり、隣は墓地で大竹藪おおたけやぶがありました。静かでよいのですけれど、そんなですから、ひどく草が生えます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
「霧の小路はうす暗い。抜け駈けせんと、町辻を踏みたがえるな。——本能寺の森は、さいかちの木が目印めじるしぞ。その大竹藪おおたけやぶを、雲のすきに目あてとせよ。あれだ。あれこそ、本能寺のさいかちの木」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海棠のうしろにはちょっとした茂みがあって、奥は大竹藪おおたけやぶが十丈のみどりを春の日にさらしている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
机竜之助は何里つづくとも知れない大竹藪おおたけやぶの中をひとりであるいている。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうして京都の月は東京の月よりも丸くて大きいように感じた。町や人にきたときは、土曜と日曜を利用して遠い郊外に出た。宗助は至る所の大竹藪おおたけやぶに緑のこもる深い姿を喜んだ。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大竹藪おおたけやぶ屏風びょうぶをめぐらしたように囲んでいるのもわかりました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)