大伝馬町おおでんまちょう)” の例文
旧字:大傳馬町
海賊橋から江戸橋を渡って、伊勢町いせちょうを突き当たると大伝馬町おおでんまちょう、そこから左へ曲がると、もう雛市ひないちの始まっている十軒店じゅっけんだなの通りでした。
万巻楼の主人は大伝馬町おおでんまちょう袋屋亀次郎ふくろやかめじろうで、これよりさき保のはじめて訳したカッケンボスの『米国史』を引き受けて、前年これを発行したことがある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
自働車の止まったのは大伝馬町おおでんまちょうである。同時に乗客は三四人、一度に自働車を降りはじめた。宣教師はいつか本をひざに、きょろきょろ窓の外を眺めている。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「幸吉、お前、これから直ぐに大伝馬町おおでんまちょうの勝田さんへ使いに行ってくれ、急ぎの用だから、早く……」
越後屋えちごやと対抗した江戸一流の呉服屋で、呉服の外に、大伝馬町おおでんまちょう金吹町かなぶきちょうなどに唐物屋とうぶつや、米屋、金物屋などの店を持ち、今の百貨店デパートを幾つにも割ったような豪勢な商売をしている店でした。
前だれがけに角帯をしめた日本橋大伝馬町おおでんまちょうへんの大店おおだなの若者か、芝居の替り目ごとに新番付を配りに来る芝居茶屋の若い衆か、近くの河岸かしに住む町家のおかみさんや娘などの人たちでした。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
塩町しおちょうから大伝馬町おおでんまちょうに出る。本町を横切って、石町河岸こくちょうがしから龍閑橋りゅうかんばし鎌倉河岸かまくらがしに掛る。次第に人通が薄らぐので、九郎右衛門は手拭を出して頬被ほおかぶりをして、わざとよろめきながら歩く。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
江戸大伝馬町おおでんまちょうの豪家佐久間某さくまなにがしの家の下女お竹と申すものが、勿体もったいなくも大日如来の化身であったという寛永年間の伝説を詠んだもので、そのことは斎藤月岑さいとうげっしんの有名な『武江年表』にも載っており