夜鷹蕎麦よたかそば)” の例文
旧字:夜鷹蕎麥
生垣の下にうずくまるもの、塀の袖に隠れるもの、軒下にへばりつくもの、按摩あんま夜鷹蕎麦よたかそば、流しの三味線などは、一体幾度往復したことでしょう。
傍へ往って慰めてやろうとすると娘が顔をあげたが、それは目も鼻もないのっぺら坊であった。商人はふるえあがって逃げていると夜鷹蕎麦よたかそばがいた。
怪譚小説の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
枯れ柳の暗いかげを揺りみだす夜風が霜を吹いて、半七は凍るように寒くなった。かれは柳の下に荷をおろしている夜鷹蕎麦よたかそば屋の燈火あかりをみて思わず足を停めた。
半七捕物帳:37 松茸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もつとも外へ出ますと夜鷹蕎麦よたかそばでもなんでもありますから貴所方あなたがたのおあし御勝手ごかつて召上めしあがりまして。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
坂の上まで来ると、夜鷹蕎麦よたかそばの灯が見える。よろよろと屋台の中へ首を入れた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
商人は一声叫ぶなり坂を四谷よつやの方へ逃げあがった。あがったところに夜鷹蕎麦よたかそばの灯があった。商人はふいごのような呼吸いきと同時にその屋台へ飛びこんだ。
(新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
近所の人にだんだん問い合わせると、前の晩の夜ふけに彼によく似た男が通りがかりの夜鷹蕎麦よたかそばを呼び止めて、燗酒かんざけを飲んでいるのを見た者があるとのことであった。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こういう奴が出るから茶飯ちゃめしあんかけ豆腐や夜鷹蕎麦よたかそばひまになる、一つ張りとばしてやろうと、廿人力の拳骨を固めてうしろへ下ろうとする蟠龍軒の横面よこずっぽうをポカーリッと殴ると、痛いの痛くないの
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)