墓穴ぼけつ)” の例文
この二つの法諡はいずれも石にられなかった。抽斎の墓には海保漁村の文を刻した碑が立てられ、また五百の遺骸は抽斎の墓穴ぼけつに合葬せられたからである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこには、アーチ形の古めかしい墓穴ぼけつが出てきたり、竪琴たてごといた天使が現われたり、物を言う花だの、はるかにただよってくるがくだの、たいした道具だてだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それを見ると主膳は直ちに、こいつ墓掘りだ、隠亡おんぼう共だわい、と気取けどりました。隠亡が墓地へ墓穴ぼけつを掘りに来るのはあたりまえの看板だから、少しも恐るるには足りない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
四人がはいりこんだ安全の洞穴が、四人が溺死できし墓穴ぼけつになろうとしているのだ。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その頃——つまりあの無分別な青春の頃にも、わたしはあながち、わたしに呼びかける悲しげな声や、墓穴ぼけつの中からつたわってくる荘厳そうごんな物音に、耳をふさいでいたわけではない。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
パチノ墓穴ぼけつ惨劇さんげき
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)