塗縁ぬりぶち)” の例文
突き当りに牡丹ぼたん孔雀くじゃくをかいた、塗縁ぬりぶちの杉戸がある。上草履を脱いで這入って見ると内外うちそとが障子で、内の障子から明りがさしている。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
出来上った新築の二階家の玄関は、母の趣味で広い式台が附き、塗縁ぬりぶちの障子が建ててありました。「こうして置かねば、お邸のお部屋様やお姫様方をお招きするのに似合わないから」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
朱の塗縁ぬりぶちに吉野杉の骨の、がっしりした本間ほんげん襖で、刷毛はけを持って向いあうだけでも気持がひきしまり、いかにも「仕事をする」という、こころよい昂奮こうふんが全身に感じられるようであった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
背丈せたけのすぐれた、そして、かない鰐口わにぐちを、くぼんだ頬に彫りこんでいる上野介が、式台の正面にある衝立ついたて塗縁ぬりぶちを、扇子で、打ち叩きながら、そこに、りつけて平伏している浅野の家中を
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)