堂塔どうとう)” の例文
入道が、入道としての、面目を発すれば、彼等の伽藍がらん堂塔どうとう一夕いっせきに焼きつくして、一物の金泥や金襴きんらんも残さない焼け跡の灰の中に
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そういう供物くもつ一つだけではない、小さなのを合せると百二、三十本も堂塔どうとうの廻りに飾られてあるのですからなかなかの美観で、チベットではこれより以上の供物をすることはない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
昼ならばここから一眸いちぼうになし得る京洛けいらくの町々も、特徴のある堂塔どうとうや大きな河をのぞいては、ただ全市の輪郭が闇の底おぼろに望まれるだけだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まず、少ないでしょう。むしろ神事の祭と対立しているように、堂塔どうとうの大を誇ったり、権門けんもん帰依きえたのんでいるほうが、まず偽らない現実です」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堂塔どうとうあわくぼかされて、人気ひとけもない天王寺の夕闇を、白い紙屑かみくずが舞っている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
富士の裾野すそのをでていらい、わしに乗って北国ほっこくも見たし、東海道とうかいどう見物けんぶつしたし、奈良なら堂塔どうとう大和やまとの平野、京都の今宮祭いまみやまつりまで見たから、こんどはひとつ思いきって、四国へ飛ぼうか、九州へいこうか?
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去年こぞの暮、南都の大衆に、不穏ふおんのきざしありとかで、清盛入道は、重衡朝臣しげひらあそんをして三万余騎をさしむけ、またたくまに奈良の東大寺、興福寺をはじめ、伽藍がらん堂塔どうとうを焼きはらい、大乗小乗の聖教やら
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)